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歯周病は3歳以上のわんこの歯の疾患の85%を占め、
歯周病菌は心臓や腎臓など、全身疾患を引き起こす素になります。
毎日のケアや食事の注意で、歯周病になりにくい強い歯と歯茎を作りましょう!
今回は歯周病のことの説明ではなく、どうしたら歯周病になりにくい
「強い歯」を作るか、家庭でできることを取り上げてゆきます。
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「歯磨きのすすめ」という項目で詳しく述べていますので
そちらをご参考になさって下さい。
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マイクロバイオームとは私たちの身体に共生する微生物
(細菌・真菌・ウイルスなど)の総体のことです。
これらの微生物は、皮膚、口腔、鼻腔、呼吸器、消化器、生殖器など
身体が外部環境に接するあらゆる場所に存在していて
それぞれの部位によって特徴的な微生物の群集が常在しています。
特に腸に生息する細菌(腸内細菌叢)は約1,000種類、約100兆個といわれています。
近年の研究からマイクロバイオームが健康な免疫システムを維持し、炎症を抑制する上で
重要な役割を果たしていることが次々と明らかになってきています。
腸の健康が健康の要と言われるように腸内細菌は取り上げられることが多いのですが
口腔内のマイクロバイオームは歯に大きな影響を与えるだけでなく
最終的に身体全体の健康状態に大きな影響を与えています。
ここではそんな口腔内マイクロバイオームとの関係に触れながら
家庭でできる歯周病予防をお食事や栄養素、ケアなどの視点から考えます。
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強い歯のための口腔環境を保つスタートはまず食事から!
口腔内のマイクロバイオームを元気に保つ食事が大切です。
食事には口腔内を良い環境に保ってくれるプロバイオテックスと
プレバイオテックスが含まれていることが必須条件となります。
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プロバイオテックス(Probiotics)とは、生命体に良い影響を与える「生菌」の総称で、
乳酸菌やビフィズス菌などのことです。
過去10年の口腔内のマイクロバイオームの働きを調べる研究では
臨床歯周病治療においてプロバイオテックスの効果が立証されていて
また歯周病の予防にもプロバイオテックスが推奨されています。
研究によるとプロバイオテックスを歯や歯茎など口腔内に塗布することで
炎症や歯周病の原因となる悪玉菌が軽減することがわかっています。
プロバイオテックスを毎日与えたり、または歯茎に直接塗ると
これらの有益な生菌たちがコロニーを組み
表面にぬるぬるした粘着性の層(バイオフィルム)を形成することで
歯や歯茎、口腔内粘膜を保護します。
また、プロバイオテックスを塗布することで骨密度も増すことがわかっています。
毎日、プロバイオテックスを歯茎に少量塗りこむことは
口腔内の環境を改善し、歯を強くし、歯周病予防につながります。
口腔内環境が整うことで悪玉菌が軽減し、歯垢が付きにくくなりますので、
結果として口臭予防にも繋がります。
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プレバイオティックスとは善玉菌の餌となる食物繊維やオリゴ糖などの総称です。
細菌ではないのでプロバイオテックスではなく、プレバイオティックス(prebiotics)と呼ばれます。
プロバイオティックスと一緒に摂ることで腸内で善玉菌が育ちやすくなり、
その結果として腸内環境が整い、免疫システムを強化します。
プレバイオテックス(食物繊維など)の働きは
細菌が糖を酸に変化させたり、糖から歯垢を生成するのをブロックします。
言い換えれば
口腔内の消化酵素アミラーゼがデンプンをグルコースに分解するのを阻害することで
糖が歯垢を生成するのを防ぎます。
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プロバイオテックスとプレバイオテックスについては
以下のお勉強室もご参考になさってくださいね。
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ゴボウやニンジンなどの根菜類やライ麦や雑穀に含まれるオリゴ糖は
ビフィズス菌の働きを高めてくれる多糖類です。
ヨーグルトや納豆などの発酵食品は善玉菌を活性化させる働きがあります。
ビフィズス菌は炭水化物を分解して餌にし、乳酸や酢酸を作って腸内を酸性にします。
(ただ、ビフィズス菌のある種は、アトピー治療に重要なビオチンというビタミンを
食べてしまうという説がありますので、できればアシドフィルス菌やカゼイ菌、プルガリクス菌、
ブレビス菌などのプロバイオテックスを推奨します)
リンゴに含まれるペクチンは善玉菌の餌になるとともに、腸内を酸性に保ちます。
海草類に含まれる多糖類、キノコ類に含まれる多糖類(グルカン)も善玉菌の餌になります。
ビタミンB1・B2・B6は善玉菌を増やすビタミンたちです。
これらはビフィズス菌によって腸内でも合成されますが、
さらに摂取することで腸内で合成されたビタミンたちが血液に取り込まれやすくなります。
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では、まずどんな食事が犬の歯を弱らせてしまうのでしょう?
それは「歯石が溜まりやすい食事」・・・とてもシンプルです。
犬にとって「歯石が溜まりやすい食事」とは「炭水化物の豊富な食事」です。
炭水化物は分解されて最終的に「糖」に変わりますが
直接砂糖を食べるか、それとも炭水化物を食べるかについては
大きな違いはありません。
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ドライフードはウェットフードに比べて歯石が付きにくいと信じてる方は
意外に多いのではないでしょうか?
カリカリ(ドライフード)は歯の表面の歯垢を取り除いてくれると思いがちですが
わんこたちは歯の表面を削るほどカリカリを長い時間噛み噛みしていますか?
カリカリに歯垢を削り取る効果を期待するなら、もっと硬くて
噛むのに時間を要するほど大きなものでなければ意味がありません。
現状のカリカリの大きさは歯垢を摂るにはあまりにも小さくて柔らかいのです。
でもウェットフードよりは歯の隙間に残りにくいのでは?と
思ってらっしゃる方も多いかもしれませんが、違いはありません。
カリカリは歯垢を取るのに役立たないばかりか
高温と高圧で加工しているため、発がん性のあるAGE(終末糖化生成物)や
HCA(複素環式アミン)が生成されます。
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強い毒性を持ち、老化促進の元凶として注目される物質です。
タンパク質に過剰な「糖」がこびりつき、タンパク質が糖化され、
AGEと呼ばれる劣化タンパク質物質が溜まってくることによって
広範囲にさまざまな炎症を起こします。
パンを卵と牛乳に浸したフレンチトーストを焼いた時に
糖質(炭水化物)とタンパク質が合わさって焦げた部分、それらがAGEです。
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お肉を高熱で調理した時に出る発がん性の物質です。
お肉を高温で調理すると、発がん性の複素環式アミンと多環芳香族炭化水素が形成されます。
これらが、「高温処理されたタンパク質や炭水化物」が
身体の中で炎症を引き起こす理由の一つです。
カリカリとは炭水化物とタンパク質を高温処理したものです。
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ここ最近の研究では、慢性酸化ストレス(酸化)と
歯周病を引き起こす口腔細菌との関連性が指摘されています。
酸化ストレスとは身体の細胞や組織に対するフリーラジカルによる損傷です。
フリーラジカルと抗酸化物質の適切なバランスは身体にとって非常に重要で、
これは健康な歯周組織にとっても同様です。
このことはつまり抗酸化物質が犬の歯の健康に重要な役割を果たすことを意味します。
ベリー類や緑葉野菜など抗酸化物質が豊富な食品を
積極的に食事に加えてあげることは歯周病予防にとても有益です。
歯周病予防にも良い抗酸化物質 |
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葉酸
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脂肪酸サプリメントは歯周炎の管理にも役立ちます。
オメガ3脂肪酸は口腔の健康だけではなく
関節、心臓、腎臓、脳の健康などさまざまな側面に利益をもたらします。
また、MCTオイルを歯茎に塗ったり歯ブラシに塗って磨いたりは非常に効果的です。
MCTオイルの中鎖脂肪酸には抗菌特性があります。
歯茎に使用すると毒素を排出するのに役立つことが証明されています。
MCTオイルはココナツオイルから中鎖脂肪酸だけを抽出したもので
含まれる中鎖脂肪酸の割合は100%です。
ココナッツオイルは、ココナッツの胚乳から抽出されたオイルのことで、
含まれる中鎖脂肪酸の割合は約60%です。
MCTオイルの代わりにココナツオイルはを使う場合はごく少量を!
炎症性腸炎のある子にはココナツオイルは腸壁への刺激になる場合があるので
そんな子にはやはりMCTオイルをお勧めします。
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脂肪酸については以下の記事もご参考になさってくださいね。
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歯垢を除去するための最良の方法は、自宅での定期的な歯磨きです。
毎日のブラッシングは大変な作業のように思えるかもしれませんが、
歯を清潔に保ち、歯垢の蓄積を減らし、口臭を予防し
歯周病を予防することにより、健康な口を維持するのに役立ちます。
特に小型犬は重大なレベルの歯の病気になりやすいので大切です。
獣医さんお勧めの歯磨き粉でも要チェック項目
もっと簡単にデンタルトイやローハイドではダメなのかな?
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市販のまたはたとえ獣医さんで勧められるペット用歯磨き粉でも
必ず以下の成分の有無をチェックしてください。
ブドウ糖、サッカリンナトリウム、ソルビトールなどの人工甘味料が含まれていないか、
アルコール、銅クロラフィリニスナトリウムなどの人工着色料、人工香料が含まれていないか。
ホルモンに影響を及ぼすしたり腸に炎症を引き起こすとしてFDAが禁止したトリコルサンも
一部のペット用歯磨き粉のラベルに記載されています。
成分として記載されていないもので含有されている可能性があるものとしてはリン酸です。
成分表には記載がないのにパッケージには「リン酸が含まれる可能性がある」と記載されています。
低濃度のリン酸でも皮膚に接触すると乾燥、発赤、ひび割れを引き起こす可能性があります。
皮膚や目に刺激性があるチオシアン酸カリウムも歯磨き粉や医薬品に含まれています。
火薬、肥料、医薬品として使用される硝酸カリウムも入っている場合があります。
高濃度では目や皮膚に炎症を引き起こし、重大な影響を与える可能性があります。
環境作業部会 (EWG) は、
犬用の歯磨き粉を含む約 1,500 種類の健康および美容製品の成分として
ラウリル硫酸ナトリウムをリストに入れています。
これは、製品に泡や泡を引き起こす界面活性剤です。
危険リスクが低い「普通」にランク付けされていますが目、皮膚、口、肺を刺激することが
指摘されていることと環境毒素であると疑われているものです。
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この動画を見てもあげたいと思いますか?
どんなブランドであっても似たり寄ったりだと思われます。
ローハイドやデンタルチューをあげるのであれば、生の骨の方がはるかに安全です。
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歯磨き大嫌いです~!の子も「あれ?美味しいじゃない?」で
歯磨き習慣が付くロングセラー・デンタトリートもお勧めです。
プロバイオテックスもプレバイオテックスも酵素も入った優秀な商品!
メーカーはフードにかけるだけで口腔環境が整うと言いますが
「歯磨きチーズ」って歯ブラシに付けて磨いてる子がほとんどです。
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我が家では歯磨きプラス定期的に爪でカリカリ歯垢取りをします。
それでも奥歯や歯の裏側は磨きにくいので定期的なスケーリングをお勧めします。
麻酔のリスクがどうしても・・・という場合は麻酔なしスケーリングもあります。
Cocoっちも10年前から数回麻酔なしのスケーリングを受けました。
↓ こんな感じでミノムシになって受けました。
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風薫る5月!新緑が目にしみ、若葉の香りの清々しい季節ですね。
ゴールデンウィークは遠出を楽しまれた子もきっと多いはず。
みんな気持ちも五月晴れでハッピーに過ごしているかな?
ダブルコートの子は換毛期の真っただ中の子もいるかも。
蒸し暑い季節に向かってしっかりお着換えしてね。
マイアミの日中はもうすっかり真夏の陽気で
バルコニーのフランジパニのお花も元気に咲き始めました。
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それでも朝夕は涼しい風が吹いて過ごしやすい季節。
今、この記事を書いているのは朝の07:00
バルコニーのガラス戸を開けて涼しい風を感じています。
自然の風の中でCocoっちはまだ寝んね。
シニアさんになったのか最近は本当に良く寝んねします。
体力温存して今日も元気に過ごそうね!
日本も各地で気温がぐんぐん上がってくる頃ですね。
もうお散歩でハアハアいっちゃう季節かな?それともまだ大丈夫?
梅雨に入る前の爽やかなこの季節をうんと楽しんでおきましょうね。
そして美味しいご飯をいっぱい食べてしっかり体力と抵抗力を付けて、
みんな元気いっぱいに暑い季節に備えましょう~!
May.2023
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