プロバイオテックス
プロバイオテックスって何?
プロバイオテックス(Probiotics)とは、 腸内フローラのバランスを改善し、 腸内環境を良くすることで 生命体に良い影響を与える「生菌」の総称で、 乳酸菌やビフィズス菌などのことです。 その対義語はアンチバイオテックス(Antibiotics)=抗生物質で、 アンチバイオテックス(抗生物質)が 「有害な菌を殺す」ことで病気から身体を守るのに対して、 プロバイオテックスは、「有益な菌を増やす」ことで 免疫力を高め、病気予防で身体を守ります。 プロバイオティックスの意味は「生菌」なので、 「生きて腸に届くものがプロバイオティックス」ですが、 現在は、生きていたけど腸まで届いてないらしいもの、とか、 生きた菌だったけど、その後の高温処理で 効力を持たない状態になったものまでプロバイオティックス入りと 表記されていたりするので、実に紛らわしいのです。 * 腸内の善玉菌の餌となるオリゴ糖などは細菌ではないので プロバイオテックスではなく、 プレバイオティックス(prebiotics)と呼ばれます。 プロバイオティックスと一緒に摂ることで 腸内で善玉菌が育ちやすくなります。 最近はプロバイオテックスはいろんなものに添加されていて、 ドライフードにさえ「プロバイオテックス含有」と記されています。 しかし、そのプロバイオテックス、本当に身体に効いていますか? そんな部分を含めて考察してみたいと思います。 免疫を司る腸内環境は健康の要、そしてそれを整えるのは善玉菌の仕事です。 そんな腸の善玉菌を応援してくれるプロバイオテックス、 意味や働き、種類などを知って、善玉菌をしっかり応援してあげてくださいね。
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プロバイオテックスの有益性は人間だけでなく 獣医学の分野でも常識になりつつあります。 プロバイオテックス療法は、 下痢・炎症性腸疾患・慢性の腎疾患・膵炎のペットへの 有益性が、科学的に証明されています。 また、プロバイオテックスが免疫系を引き上げる研究結果に関して、 テネシー大学の小動物臨床科学科のSusan G. Wynn博士は、 以下のように述べています。 「消化器官の健康状態が全身状態に影響を与えるということは、 今日、ますます明らかになっています。
プロバイオティクスの使用は、犬と猫を含む小動物の免疫機能を強化して、 ある種の胃腸不良状態にある動物の治療に 効果があることが明らかになっています。」 また、Wynn博士は、次のようにも述べています。 「ヒトにおいて、再発を繰り返す尿路感染症・アレルギーの予防と管理・ その他の疾患に対するプロバイオテックスの効果は、 そのままペットへの効果を示唆しています。」
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オナラは臭くありませんか? ウンチの頻度は多すぎませんか? 健康な色のウンチですか? ウンチが柔らかすぎませんか?
これらは、腸に悪玉菌が増えすぎている時のサインです。消化器官は、身体の免疫システムを担う最大の臓器です。 わんこやにゃんこたちは、私たちよりもはるかに多くの 信じられない数のバクテリアをその腸管に保有しています。 その中には、消化管以外の場所で見つかったら 致命的な感染症を引き起こすような強いバクテリアも有しています。 腸内環境で善玉菌が健康なレベルの数だけ保有できていれば 免疫システムは強力に保たれますが、 なんらかの理由で悪玉菌が優勢になった場合は 免疫系が弱まり、身体のバランスを崩し、病気にかかりやすくなります。 腸内善玉菌は、身体がビタミンB群を産生するのを助け、 健康な免疫システムを維持し、悪玉菌を押さえ込む働きがあります。 併せて、お勉強室の以下のページもも是非読んでみてくださいね。 「ウンチくん元気かな?」 「とっても大事!消化と吸収」
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悪玉菌が増える原因となるものは 消化器官にかかる生理的または精神的なストレス因子です。
腸内環境が崩れる原因となるストレス因子には以下のものがあります。
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抗生物質やステロイドは、一般的に処方される薬ですが、 「腸内の善玉菌を弱めてしまう薬である」 ということを忘れないでください。 「殺虫剤・化学薬品」は家の掃除用品だけでなく スポットタイプのノミ・ダニよけも含みます。 上記のストレス因子が善玉菌を弱め、 腸の悪玉菌が増える環境にした場合、 慢性の下痢によって栄養の吸収率を低下させ、 腸から栄養が漏れる状態を引き起こします。
このことはつまり、未消化のアミノ酸とアレルゲンが血中に吸収されるということを意味します。 そしてこのことが、アレルギーや自己免疫疾患などを 引き起こす原因となるのです。
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プロバイオテックスとは有益バクテリアです。 善玉菌であり、腸内環境を自分たちが住みやすい環境に 整える性質(能力)があります。 ホリスティックの獣医さんたちの間では、 プロバイオティックスは長年に渡って使用されてきましたが、 従来の獣医師たちは、その有効性を全く認めていませんでした。 しかし、ここ数年の研究において、プロバイオティクスが、 抗生物質とステロイド薬の副作用で苦しんでいる人々だけでなく、 重度の炎症性腸疾患(IBD)・胃炎と大腸炎(すべての消化管疾患)で 犬や猫のために非常に有益だったことが明らかになってゆきました。 実際にはその研究結果の多くは、 改善がプロバイオテックスの効果「のみ」によるものではない ・・・というものでしたが、 事実、対象となった多くのペットたちが、 合併症を引き起こすことが少なく、早期回復をしているのも事実です。
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プロバイオテックスの有効性の研究に参加した 腎不全の犬とネコにおいて、 非常に希望的な結果が報告されています。 軽度から中度の腎不全のペットにおいては 非常に優れた改善結果が報告されました。
より重度な腎不全のペットたちに関しても、症状が安定し、その結果として生活の質が改善されたと報告されています。 プロバイオティックスはある種の真菌の増殖を押さえ込んだり 病原菌の増殖を抑制する力があり、 自然の抗生物質としての働きもあります。 そのため、特定の感染症を予防する目的で 家畜(家禽・ブタ・子牛)にも、しばしば使われます。 プロバイオティックスは犬の膵炎に対して有効であり、 アレルギーやその他、免疫系疾患において 今後もその効果が、さらに実証されてゆくと思われます。 プロバイオテックスをパピーに与えると 栄養素や鉄の消化吸収を助けますので、成長促進になります。
シニアの子や虚弱体質の子にあげると食欲を高め、エネルギー増強作用が期待できます。
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ヒトが使用するプロバイオティックスサプリメントは ヒトの消化器官に見られる細菌種を強化する構成で 開発されています。 犬やネコたちは、彼ら固有の特殊な株を持っているため 特殊なプロバイオティックス構成を必要とします。 彼らは彼らに合った構成のプロバイオティックスを使用することで 最も優れた結果を得られるのです。 以下はこちらのホリスティック獣医師の意見です。 「プロバイオティックス」であると主張している コマーシャルペットフードに騙されないでください。 プロバイオティックスのバクテリアは、生菌であり、 且つそれが善玉菌として繁殖することができなければなりません。
プロバイオティックスを含むと主張しているドッグフードはその製造プロセスにおいて、高温処理をするため その時点で生菌を死滅させてしまいます。
そして食物がパックされて送られる頃には、プロバイオティックスの効果は全く失われてしまっているのです。 ・・・と、言うか、この時点で死滅しているので プロバイオティックス(生菌)ではなくなっているわけです。 ただ、「有胞子性乳酸菌」というものは熱にも酸にも強いので Bacillus coagulansを含んでいれば、 生きた菌が含まれている可能性もありますので ラベルをチェックしてみてくださいね。 * 腸に届くまでに胃酸や胆汁で死んでしまった乳酸菌たちは 腸に届いた段階で善玉菌の餌になります。
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わんにゃんたちはその消化器官にヒトとは違う 特殊な生菌株を持っています。
これらの菌の中には縄張り意識が強く、外から入ってきたよそ者を排除してしまうものもありますので、 ヒトには効くけど、わんにゃんには効果のない乳酸菌もあります。 また、わんにゃんの胃酸の強さは私たちの比ではないので その酸に打ち勝つだけの強い菌である必要があります。 ペットのための完全なプロバイオティックスは、 健康な腸内環境への修復とメンテナンスに必要な生菌株、 また、免疫不全状態で衰弱した動物のために 有益な生菌株を含んだものであるべきです。 わんにゃんの胃液の強力さと 抗バクテリアのしくみは 「生食についての考察」 の項で触れています。
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乳酸菌には植物性と動物性のものがあり、 以下のような発酵食品に含まれています。
動物性 |
植物性 |
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乳酸菌だけでもその数は莫大ですが、 ここではわんこたちに有益な菌たちを取り上げますね。
プロバイオティクスの種類
特徴と働き
乳酸桿菌・Lactobacillus
ラクトバチルスはグラム陽性の乳酸桿菌の総称で、ヒトにもわんにゃんの腸内にも広く分布しています。 酸に極めて強いのが特徴です。 pH 5.5-5.8でよく育ち、腐敗産物を作らず、 最終産物の乳酸は、腐敗菌の生育を阻害します。
Lactobacillus bulgaricus ラクトバチルス・ブルガリウス
- ラクトバチルスとは「グラム陽性の乳酸桿菌」の総称です。
- ブルガリア菌はヨーグルトなどに幅広く使われていて、腸内環境を整える働きがありますが、腸内に棲みつくことはできません。
Lactobacillus Acidophilusラクトバチルス・アシドフィルス
- ラクトバチルスとはグラム陽性の乳酸桿菌の総称で、ヒトにもわんにゃんの腸内にも広く分布しています。
- 酸素があっても生活できる菌なので、腸内以外にも口腔内や腸以外の消化管にも存在します。
- アシドフィルス菌は、腸内に棲む善玉菌の中で最もたくさんいる生菌で、糖を分解して、乳酸を作ることで、腸内を酸性に保ち、悪玉菌の棲みにくい環境をを整える働きをします。
- 酸にも熱にも強いのが特徴です。わんこたちの強い胃酸にも負けない生菌で、胃潰瘍や胃炎を予防する働きもあります。
Lactobacillus plantarum ラクトバチルス・プランタラム
- 全世界のお漬物に含まれる乳酸菌です。ぬか漬け・しば漬け・キムチ・ザワークラウト・サワーブレッドなどに含まれる酸っぱい菌です。
Lactobacillus casei ラクトバチルス・カゼイ
- ラクトバチルス・カゼイは小腸下部で働く動物性乳酸菌です。
- 酸に強く腸から便に至るまで生き残る強い菌です。
- ラクトバチルス・カゼイにshirotaと付くとヤクルト菌です。
Lactobacillus rhamnosusラクトバチルス・ラムノサス
- 代表的な乳酸桿菌で腸内環境を整えてくれます。
ビフィズス菌・Bifidobacteriumビフィドバクテリウムグラム陽性の偏性嫌気性桿菌の総称で、 一般的にビフィズス菌と呼ばれるものです。 酸素があると生育できません。
最終産物として、乳酸を作り出しますが、同時に殺菌力の強い酢酸を産生し、 腸内を悪玉菌が棲みにくい酸性に保ちます。
ヒトと動物の腸内に棲んでいて、乳児で母乳を飲んでいる時に最もその数が多く その数は加齢とともに減ってゆきます。 (加齢とともに他の嫌気性菌に交代してゆきます)
ビフィズス菌はヒトと動物では腸に棲んでいる種類が異なります。以下は動物の腸内に棲むビフィズス菌たちです。
Bifidobacterium lactis(Bifidobacterium Animalis subsp.lactis) ビフィドバクテリウム・ラクティス
- ビフィドバクテリウムは腸内でとても優勢な善玉菌です。
- 糖を分解して乳酸を作り出しますが、それ以上に、殺菌力の強い酢酸を産生することで腸の悪玉菌をやっつける力があり、腸内環境を悪玉菌が棲みにくい酸性に保ちます。
- ヨーグルトに含まれる代表的な有益菌ですが、乳酸を産生する乳酸菌(乳酸球菌や乳酸桿菌)とは異なり、酸素があると生活できない菌です。
Bifidobacterium Animalis subsp.animalisビフィドバクテリウム・アニマリス
- ラクティス菌の一種で胃酸や胆汁など消化液に強く、牛や馬や豚などの大腸に多く存在するのでアニマリス(アニマル)の名前がついています。
- 消化管の中で短鎖脂肪酸を増やし、B.ラクティス・L.ラクティス・L.ブルガリクス・S.サーモフィルスなどの善玉菌を増やします。
Bifidobacterium Pseudolongum (subsp. globosum・subsp.pseudolongum) ビフィドバクテリウム・シュードロンガム
- ラクティス菌の一種で胃酸や胆汁など消化液に強く、犬の大腸に多く存在するビフィズス菌です。
Bifidobacterium longum ビフィドバクテリウム・ロンガム
- ビフィドバクテリウム・ロンガムはヒトの腸内菌ですが、酸に強いのが特徴です。わんこたちの強い胃酸にも負けない生菌で、腸まで届いて働きます。
- 腸の常在菌の1つですが、加齢とともに減ってゆくので、毎日少しずつ摂取すると良い菌の一つです。
Bifidobacterium thermophilumビフィドバクテリウム・サーモフィラム
- ラクティス菌の一種で胃酸や胆汁など消化液に強く、犬の大腸に多く存在するビフィズス菌です。
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乳酸菌たちは熱に弱かったり、 胃酸に弱かったりというものが多いので、 それを避ける摂取方法で元気なままで腸に届けましょう。 ご飯と一緒に、または、食後に摂取することで 強い胃酸の影響をダイレクトに受けることを避けます。
一番摂取してはいけないのは空腹時。せっかくの乳酸菌たちが強い胃酸にやられちゃいます。 朝はヨーグルトだけっていう場合は最もいけない摂り方かも。 サプリで摂る場合は、調理したての熱いご飯に混ぜるのではなく、 冷ましたご飯に混ぜ混ぜしてあげてくださいね。 ヨーグルトやケフィアをかける場合も「冷めてから」が原則です。 また、オリゴ糖など腸の善玉菌の餌となる プリパイオティックスと一緒に摂取すると、 善玉菌が育ちやすくなります。
食物繊維(水溶性・不溶性どちらでも)も善玉菌の働きを助けますので、一緒にあげると有効です。 (わんこたちの消化管は食物繊維を消化しにくいので あげるときはピューレにしてあげてくださいね) 乳酸菌は腸にずっと残ることができないので 毎日少しずつでも持続的にあげると効果的です。
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5エレメントでは、03/21から06/06までが春です。 春は肝臓と胆嚢にエネルギーが集まる季節、 そしてこの季節はフィラリアのお薬が開始になる時期でもありますね。 そんな意味からも浄化工場である肝臓の働きを応援してあげる食材を ご飯に足してあげてくださいね。 肝臓の元気応援には以下のページもご参考になさってくださいね。 「浄化工場・肝臓を守ろう」 「肝臓機能を高めるツボマッサージ」
そして、肝機能をしっかり応援して体内解毒をしながら免疫機能を上げるためには「腸の健康」が非常に大切です。 (5エレメントでは)腸は、わんこたちが最も苦手な季節である 夏にエネルギーが集まる臓器。 そのためにも今のこの時期からしっかり調子を整えておきたい臓器です。 免疫力アップに欠かせないプロバイオテックス、 善玉菌をしっかり応援して、元気なウンチで老廃物を外に出して 身体の中に病気の元になる腐敗物を溜め込まないで、 毎日を気持ちの良いお腹で過ごしましょうね。
爽やかな風の吹く中、どんどん気温が上がってゆく季節。 美味しいご飯と楽しいお散歩で、 身体のバランスを整えて元気に過ごしましょうね!
May.2015
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